「極・メイド・イン・ジャパン」
一試合目でクロフィとバレンはいきなり対戦する事になった。
「調度いい、今回の体の強度がどんな物かお互い試してみようじゃないか」
「オッケー、クロフィ。前回みたいにかなりの強度を持ってるといいんだけどね♪」
「♪?」
「え?オッケー♪って」
「♪って何だ」
「クロフィ、中学の時何してたのよ、現代風にちゃんと馴染んで来た?」
「怖いって言われて友達は出来なかった・・・」
「そ・・・そうか・・・眼が赤いもんね」
カーン
1Rのゴングが鳴った
「おういクロフィー」五郎が叫ぶ。
「何だ五郎、これから試合だぞ!」
「ちがうよぅ、マウスピース忘れてるよぅ」
「何だそれは、和訳すると口平和か」
「違うけどスレスレ意味あってるよぅ、こっちきて」
「なんだ?むぐっ!」
「今口に入れたのをくわえて戦うんだよぅ」
「わかった、そういうルールなのだな」
反対コーナーでも同じ問答をしながらバレンの口にマウスピースが入れられる。
二人はリングの中央へ。
「先に行くぞ!とうっ!」てんで素人のストレート。
グシャッ
「クロフィ!」
「なんだバレン!」
「どこだ!今の一撃でクラクラしてよく分からん!」
グルグルまわるバレンを見てクロフィがケラケラ笑う。
「鼻血が出ておる!貧弱に転生したもんよのう!」
「くっ!」体制を立て直して今度はバレンのストレートがクロフィに炸裂した。
「あがっ!」クロフィはフラフラしなかったが、ショックで動きが止まった。
「確かに・・・私も貧弱に転生したようだ・・・おーい判定者!」クロフィがレフリーを呼ぶ。
「何だね?」
「この遊戯は、どうやったら勝ちなのだ」
「君ら人間のメイドか?まあいい、1R三分、1Rのうちに三回こけたら負け、1回こけて10カウント以内に立ち上がれなかったら負け!」
「分かった」そう言うとストーンとクロフィはあおむけに倒れた。
クロフィはカウント8で立ち上がった。
バレンがケラケラ笑っている。
「愚弄は許さん!」
クロフィが笑っているバレンにボディを打ち込んだ。
バレンの動きが止まる。
「ん?どうしたバレン?打ち身のかわし方も忘れたか?」
「ブホッ・・・」バレンがマウスピースをいきなり吐き出した。
「なっ!人前でツバを吐くな汚らわしい!・・・ん?これはさっきのマウスピースというやつか・・・おーい五郎」
「なんだよぅ」
「これはツバを集める道具なのか?汚いぞ?」
「違うよぅ、さっき口を平和にするとか言ってた通りだよぅ」
「何だ?中学に勉強したフッ素でも付いているのか?」クロフィがバレンのマウスピースを拾う。
同時にバレンはあおむけに倒れる。
「む?バレン?この程度で倒れるのか?まあいい、こいつをよく見てみよう・・・ってクサッ!・・・五郎!」
「なんだよぅ、ボクは歩く辞書じゃないんだから・・・今度は何?」
「フッ素なんて無いじゃないか!こいつのツバでクサいだけだぞ!」
「フッ素なんて一言も言ってないよぅ・・・あ・・・バレンさんが立ち上がってるから気をつけて!」
「ん?」
クロフィが振り返ると、お返しとばかりバレンもボディを打った。
ズムッ!
「おげぇ・・・」
ボトッ!ボトッ!
クロフィがマウスピースを吐き出した。
「人のツバを嗅ぐんじゃない!返せ!」クロフィの持っているマウスピースを取り上げ、バレンは自分の口にはめる。
「自分のツバでヒヤッとする・・・何だこの防具は・・・」ブルルッとバレンが身震いをする。
「拾わせてもらうぞ!」バレンはクロフィのマウスピースを拾う。
「くさっ!ごっつくさっ!本当に臭いだけじゃないか!」
倒れまいとたっているクロフィが言った。
「バレン・・・お前の・・も・・出してみろ・・・・」
「分かった、手を出せ」
クロフィのグローブの上にマウスピースがベチャリと落とされる。
「さっきよりツバが多いぞ・・・やっぱクサイ・・・」
二人はマウスピースを交換しながらクサイクサイと言いあった。
「結論から言ってバレン、お前のマウスピースのほうが臭い!」
「くっ!臭いがどうした!お前のツバの量を見ろ!漆塗りもビックリなコーティングだぞ!」
二人は議論しながらリングを降りて、ああだこうだと言いながらどこかへ行った。
「え・・と・・両者リングアウト・・・レフリーやっててこんなバカな試合は初めてだ・・・」
「まってよぅ、クロフィ」五郎が後を追いかける」
「まってー、バレン!」「7色 穂子(ななしき ほのこ)」も追いかける。
「あ・・・穂子ちゃん・・・」五郎の同級生だった。
「お互い大変だね・・・」
「そうね・・・大変ね・・・」
その後五郎と穂子はメイドの愚痴を言い合いながら駄菓子屋でラムネを飲みとおした。
夜
スポーツ珍プレー集で、地元の枠ではクロフィとバレンの珍試合がTVで放送された。
「ウチのハジじゃないかよぅ、クロフィ」五郎はラムネのゲップを出しながらクロフィを攻める。
「なあ五郎?」クロフィがTVに写る自分を見ながら言った。
「なんだよぅ、弁解かよぅ!」
「これ、町内に流れてるんだろ?有名人だぞ!?ワクワクするじゃないか!」
「そ・・・そりゃあナイターに行って帰ったときもボクがいないか探すけど・・・そんな問題じゃないんだよぅ!」
「なんだ、現世は面白いではないか!」
「よくわからないけどクロフィ、今日掃除やってないでしょう、やってくれよぅ、メイドなんだろう?」
「また明日」
「大学生の寮暮らしみたいな言い訳するなよう!」
場所かわって
「見つけました、今世ではクロフィ殿、バレン殿とおっしゃるのですね、私はもう一人をお探ししておる最中で御座います」
その女性はTVを見ながら言った。
「今世は今までより過酷な条件になっておりますが・・・私は残りのお一人を探すことにします・・・今回の鍵はボクシングなる物、選択は間違えておりませぬ。
いずれ地下ボクシングとなるA地区に潜入して頂く事になりますが・・・どうぞ腕をお磨きください。」