「極・メイド・イン・ジャパン」

 

九段 クロフィ(くだん くろふぃ)。神田家のメイド。

履歴 中卒

前科11犯

犯罪前例 主人に当たる高校三年生の神田 五郎(かみだ ごろう)がいじめに合っているのを聞きつけて相手を日本刀で切りつける。

 

 

「おい五郎」

今日も朝からクロフィの声が屋敷に響き渡る。

「なんだよう」トイレに入っていたらしく、五郎がトイレを流す音と共に出てくる。

「お前、パンツがカピカピだぞ?オナニーした時はティッシュでガードしろティッシュで」

「や、やめてよう、パパとママに聞こえちゃうよぅ」

気の弱い五郎。メイドと立場は逆なようだ。

「まあカピカピはいい、さっさと掃除して日本刀でも磨くとするか」

「逆だよぅ、ちゃんと掃除して日本刀は空いた時間に磨いてよ。ってか免許持ってるの?あんな長い刀」

「持ってるわけないじゃん、没収される度に裏で買ってるに決まってるじゃん」楽天的にクロフィは笑う。

「やめてよぅ、メイドは前衛的じゃやってけないよ」

「刀くらいで前衛的と言えるか?」

「いえるよぅ、それに何で片目を縫い合わせてるんだよ」

「あーこれ?自分で縫った」

「いや誰が縫ったとかじゃなくて・・・もういいよ、学校行って来る」

「朝食をちゃんと食べていかないと殺すよ」

「わかったよぅ、本当に殺されそうだから食べるよ・・・」

しぶしぶ五郎は食卓へ向かう。

「あのさぁクロフィ・・・」

「なに?」

「何で後ろから付いてくるんだよぅ、朝食くらい一人で食べれるから・・・」

「そう?」

「それになんか君に付いて来られたら気分はクロックタワーだよ」

「何それ?」

「もういいよぅ、娯楽に関するボキャブラリにはあまり触れないから」

五郎とクロフィは食卓へ着いた。豪邸だけあって廊下は長かった。

食卓へ着くと、父親が朝食を食べている所だった。

「おお、五郎じゃないか、朝食か?もう出来てるぞ?」

「雇い主様、作ったの私だから、さも自分が作ったように言わんで下さい」クロフィが冷たく言う。

「あ、アハハ、すまんすまん、でもメイドだから雇い主様じゃなくてご主人様だろ?」

「ご主人様は五郎だ」

「同い年なのにやめてよぅ、パパをご主人様って言ってよぅ」

神田家は今日も微妙な朝を迎えた。

「おや?」五郎の父親が新聞のある広告を見つけた。

 

《あなたの家のメイドは強いですか?メイドボクシング大会を開きます》

 

「ん、これ」五郎の父親はその広告をクロフィに見せた。

 

クロフィはしばらく広告を見ていた。

「これはつまり、人間を殴っても捕まらないってこと?」嬉しそうにクロフィは尋ねる。

「うん、そういう事」五郎の父親は棒読みでそう言った。

「出ようじゃない」

(やっぱりね)

(やっぱりね)

五郎と父親の考えがシンクロした。

 

(あらあら、ウフフ)天然の五郎の母親が影から見ながら笑った。